映画「マザー!」を見たのでレビューします。
平凡な生活を望む妻とスランプの夫
主人公である妻はあくまで平凡で地味ながら、幸せな生活を望んでいました。
詩人である夫は家が焼失した事でスランプに陥ってしまい、妻はなんとか彼を励まそうと一人だけで燃えた家を修復していました。
妻を演じるジェニファー・ローレンスはアカデミー賞の常連となりますが、本作はそんな彼女の演技力が充分に伝わるほど役柄が求めるモノを健気に追っていく姿が印象的です。
美しくスタイルが良く、夫を純粋に愛し、彼の築き上げてきたキャリアを誰よりも信じている良妻賢母とはまさに本作の妻でした。
その一方で作品を生み出せない夫はずっと苦悩していました。
演じているハビエル・バルデムは個性的な顔立ちでありながらも、本作では繊細な感覚を持つ詩人を上手く表現しているだけに限らず、訪問してきた客に対する親しい態度も自然と出ているところも素晴らしかったです。
突然の訪問者が変える
見ず知らずの他人が訪問してくると、夫は温かく出迎える一方、自分たちだけの日々が失われた妻は不満を持ちます。
これについて日本でも例外ではなく、部下を連れて帰ってくる夫に連絡を受けていない妻が慌ただしく客の準備をしなければならないという構図が垣間見えます。
そこでも献身的な妻は夫の優しさを認め、見ず知らずの訪問者を家に泊めます。
ここから妻が愛した平穏な日々が徐々に壊れていき、次第に訪問者の影響で夫は遠い存在になってしまっていきました。
妻の心情を汲み取れる側として、あまりにも痛々しく、健気に夫の勝手な決断に振り回される彼女の不安と不満が伝わってきます。
破壊と創造の果て
夫がずっと大事に持っていた宝石が訪問者によって破壊されてしまい、その結果、彼の精神が不安定になると同時に妻のガマンが爆発します。
ついに妻が訪問者たちを追い出す場面では、観る側としてもストレスが溜まっていて、彼女の追い出す言葉に少しだけホッとさせられます。
それから数ヶ月の時を経て、夫婦念願の赤ん坊が授かるが、ここから訪問者が残した傷跡が大きく動き出します。
予想もできない展開が次々と巻き起こっていく中で、妻はなんとか出産して赤ん坊を両手に抱えるも、すでに夫との信頼関係が崩壊していました。
物語はもっと過激に展開していきますが、クライマックスは誰も予想もできないでしょう。