不安を裏切る歓迎!映画「ゲット・アウト」をレビューしました。
先入観や固定概念の裏返し
恋人が白人で主人公が黒人ですが、彼女の実家へ挨拶をします。
これだけで本作はどのような作品か多くの人が想像する“差別”が思い浮かぶと思います。
しかし、本作はそのような考えを完璧に利用した展開となっていました。
黒人を差別するどころか、みんな揃って賞賛するほどに彼らの素晴らしさを肯定しています。
それだけで終わるならば、本作は単なるハートフルドラマになってしまいます。
安心して観賞していますと、主人公と同様に違和感を覚えていきます。
とにかく、何かが変だと感じさせる不安感は抜群です。
笑顔に隠された真実
主人公であるクリスは写真家として活躍し、恋人のローズは湖畔の近くにある実家へ連れて行きます。
当初は不安を示していたクリスですが、ローズの実家であるアーミテージ家は彼を温かく出迎える事でひと安心しますが、そこにいた黒人の使用人たちに違和感を覚えます。
裕福な白人家庭に黒人の使用人という“差別”を連想させる構図ですが、本作の彼らにはそのような意識はありません。
使用人たちも笑顔を浮かべていますが、クリス同様に観ている側としても腑に落ちない部分があります。
これを演出する構図が非常に上手く、どこかおかしいと思っても決定的な点が分からない不安感を煽っている構成が物語に引き込まれる効果を生んでいました。
何が変なのかクリスと一緒に解明していくサスペンスの要素も上手く噛み合っていて、どうなっていくのか目が離せない展開は非常に引きつけられます。
自分らしく生きる事
物語が進むにつれて、クリスはアーミテージ家のおかしな部分に気づき始めていきます。
アーミテージ家に隠された真実を知った時の恐ろしさはより一層インパクトが強くなります。
それによって、これまでの不自然な行動や笑顔の下に隠された事実が噛み合うようになり、序盤から持たされた不気味さの正体がハッキリと分かってきます。
真実を知ったクリスは差別ではなく、それ以上のもっと危険な状況に追い込まれたと気づきますが、もうすでにどうする事ができない現在に更なる観る側に与えてくれます。
一番の危険な人物を知った時の衝撃はかなり強く、もはや同一人物とは思えないほどの変貌ぶりは圧巻でした。
それでも戦おうとするクリスの強い意志が伝わってきた時の行動力が凄まじかったです。