映画「貞子vs伽椰子」をレビューします。
相見える二つの呪い
ジャパニーズ・ホラーの火付け役にもなった『リング』は、日本でも映像化されて大ヒットをしました。
「ビデオを見た人間は一週間後に死ぬ」の呪いを受けた者は「ダビングして別の人に見せる」という方法でしか免れる事ができないという設定です。
その中で呪いをかける貞子は恐怖のシンボルとして何度も登場し、テレビの画面から這い出る姿は強いインパクトを与えました。
一方で『呪怨』もジャパニーズ・ホラーを牽引する役目を担い、低予算のオリジナルビデオから現在ではハリウッドでリメイクされるほどの大ヒットをしました。
こちらは自宅で殺された女性の強い怨念が残り、家に入った人間を次々と呪ってあっちの世界に連れて行ってしまいます。
日本を代表する二大ホラー映画がついに対決する本作はオマージュを散りばめています。
“丁寧な説明!”
【二重の呪い】
貞子の呪いにかかった友人を助けるべく主人公の有里は自らビデオを見て呪われます。
一方で伽椰子の家の近くに引っ越したもう一人の主人公の鈴花も、両親が犠牲になり、自身も呪われてしまう。
それぞれの呪いを解くには別の呪いをかけるしかないという究極の結論に達します。
本作の素晴らしいところは、それぞれの作品に対する描き方が分かりやすいです。
どちらの原作を知らなくても本作だけでも、きちんと貞子と伽椰子の呪いに関する仕組みをちゃんと描いていますし、それぞれの違いもきちんと明確にしています。
その仲介をする異端の霊能者である常盤経蔵と助手の珠緒は、二つのシリーズを繋ぎ合わせる重要な役として見事に機能していました。
しっかりとしたベースがあるからこそ、本作の対決に流れるまでの展開にドキドキとハラハラを持たせてくれます。
“目には目を歯には歯を!”
【実現した対決の行方】
貞子と伽椰子の呪いを受けた二人の主人公を引き合わせる事で、違った呪い同士をぶつけ合って打ち消そうとする霊能者の常盤経蔵の作戦は大胆ながら説得力がありました。
伽椰子の家で呪いのビデオを見る鈴花と見守る有里の前に二人の女が姿を現します。
自身の呪いを邪魔しない為に戦う貞子と伽椰子ですが、消滅せず、激しさを増し、ついには融合し、新たなバケモノになるという恐ろしい自体は非常に面白いです。
夢の対決をした結果、新たなバケモノを生み出すのは予想外の展開でした。
新たなるバケモノとなった者が見せる表情は恐ろしいです。